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さまざまな問題が発覚した中国産の食品や、遺伝子組み換え(GM)作物など、一般の消費者が「リスクがある」と考えがちな輸入品を避けて、できるだけ安全な国産品を選びたいという気持ちはよくわかる。 だが、そうした「食の安全」と、食料自給率を含めた国の農業のあり方全体の話とは、あくまで別問題だ。
野菜が典型例だが、そもそもこれまで輸入品が増えてきた最大の理由は、国産品と比べた場合の価格の安さである。 逆に言えば、国産品は、価格水準が国内の消費者の目から見て割高であるために敬遠されがちだ、という事情がある。
農産物ではないが、話を整理する上でわかりやすい事例として、うなぎの蒲焼を考えてみよう。 うなぎの蒲焼には、価格が安いが「食の安全」の視点からは相対的にリスクが大きい中国産と、価格が高いが「食の安全」で相対的にリスクが小さい国内産が存在する。
そして両者については、市場原理に基づいた一種の棲み分けが、スーパーなどの店頭ではでき上がっており、消費者によって自由な選択が行われている。 自然な姿であろう。
「食の安全」と食料自給率は別の問題。 仮に今後、日本が食料の輸入を強力に規制して、事実上締め出し、国産品に無理やり需要をシフトさせようとするならば、それは後ろ向きの対応だと言わざるを得ない。
2008年7月に交渉が決裂したが、世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハラウンド)の閣僚会合では、日本の農産物市場開放がさらに進んでいかざるを得ないということが、誰の目にも明らかになっていた。 この先、市場の開放がさらに進展すれば、海外から安い農産物がより多く輸入され、自給率を下げる要因になるとともに、国内の農家には打撃が及ぶ。

いずれ打撃が及ぶのであれば、「まず農家を保護する」という硬直的な姿勢を抜本的に見直し、農産物の自由化を積極的に進めて海外と共通の土俵で価格競争させた上で、農家に対する所得補償措置を必要に応じて弾力的に活用する、という手法も考えられよう。 国内の農業や漁業の生産性を高めることで、国産品の価格をより安くして輸入品と十分競争できるものにし、しかも安全性をアピールしてシェアを上げていく。
そういう道筋を探ることこそが、真に前向きな対応なのではないか。 人口減少・少子高齢化のもと、国内需要は尻すぼみになっていくことが避けられない。
そうした中で、製造業を中心とする日本の企業と同様に、農業もまた、海外の需要を取り込むことに注力していくべきだ。 日本の農産物は、海外のものと比べて味がよく、品質が高い。
海外で食べる現地産のリンゴの多くは小粒で、味も日本産より数段落ちる。 また、日本のスイカも評判がいいようだ。
北アフリカや中国など、世界の旅先で食べたスイカは、日本産のような甘みがなかった。 報道によると、中東の産油国であるアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに、鳥取県の農協(JA鳥取中央)がスイカを持ち込んだところ、空輸のコストなどを上乗せした結果、1個3万円を超える値段になったスイカが、スーパーで別個も売れたという(日本経済新聞2008年7月11日夕刊)。

また、この記事によると、青森県弘前市の会社が、中東の果物見本市で味のよさが評価されたりんご「ふじ」を、ドバイ経由で中東各地の百貨店に約7t出荷した。 今後も輸出を続けていくという。
日本の農産物はどんどん輸出できる。 食料の「海外依存」は本当に問題なの力。
コメは、やはり日本のものが一番おいしいと筆者は思う。 学生時代、初めての海外旅行で最初に足を踏み入れた英国で、中国料理店に入って食べたチャーハンのパサパサご飯には驚いた。
しかも、出されたジャスミン茶を飲んでいると、おなかの中で水を吸って膨らむ。 ダイエットなどの目的で、ただ満腹にしたい向きには便利この上ないだろうが、筆者は不満足だった。
日本のおコメがおいしいというのは、決して筆者を含む日本人の勝手な思い込みというわけではないようだ。 最近はやや下火になったと聞くが、日本のブランド米を中国に輸出したところ、味のよさが評判になり、贈答用にかなり高価な値段で売れたという。
円高が逆風だが、「あきたこまち」をオーストラリアに輸出する動きもある。 また、中国では近年、食品関連の不祥事が続出している。
2002年に冷凍ホウレンソウ、18年に養殖ウナギ、W年に冷凍ピーマン、18年に冷凍ギョーザや牛乳…といった具合だ。 そのため、日本の農産物や各種食品にとっては、「食の安全」を前面に出すことによって内外で販売量を増やしていく道筋が、徐々に拡大してきているようである。
2008〜9月には中国で、牛乳や粉ミルクが有害物質メラミンで汚染されていたという衝撃的な事実が発覚した。 これによって、中国製食品に対する不信感が中国の国内でも広がった。
そうした中でアサヒビールは、中国の都市部で「安全」を売り物にした成分無調整牛乳の販売に乗り出した。 イトーョーカ堂やイオンは、中国の店舗にアサヒの牛乳も並べて集客増加を狙う。
このアサヒの成分無調整牛乳は、中国の農場で調達した生乳を日本から持ち込んだ機械で処理するものだが、M乳業の場合は、89年末から上海などで日本製の牛乳をテスト販売しており、売れ行きを見極めて、本格販売するかどうかを検討するという(N経済新聞20年9月19日)。 農水省は、2007年に4337億円となっている日本の農林水産物・食品の輸出額を、19年に倍以上の1兆円規模に拡大する目標を掲げている。
ホームページを見ると、国際見本市や常設店舗の活用など、民間への委託事業を中心に、国の予算を使ってさまざまな試みがなされていることがわかる。 いまや米国、ロシアなど海外各地に広がった日本食ブームをうまく活用することも行われているようである。

また、J通信が報じたところによると、2008〜9月2日には日本貿易振興機構(ジェトロ)が香港で、海外貿易会議というイベントを開催した。 ここでは、東京都や福島県、新潟県、愛知県など9都県の農業関係の関連団体・企業が、日本産の果物や野菜の貿易について、香港の輸入・小売業者と意見交換し、輸出拡大の機会を探った。
香港では日本食ブームが続いており、11年の日本から香港への農林水産物輸出額は797億円で、米国への716億円(前年比十8.1%)を抜いた。 いまや香港が日本にとって最大の農産物輸出先になっているのだ。
だが、筆者の見るところ、いま行われている農林水産物の輸出促進策は総花的で、メリハリに欠ける。 国土交通省が観光政策で行ってきた「VISIT・JAPA7」キャンペーンや、財務省が世界各地で行っている、日本国債を海外投資家に売り込むための投資家向け広報活動(IR)に比べると、農水省の動きはアピール度に欠け、目に見える大きな成果がまだ挙がっていないと言わざるを得ない。
財務省の場合、国債売り込みのための海外IRを2005年に開始した。 すでに約25の都市で85回ほどセミナーを開催したので、今後は各国の機関投資家などを個別に直接訪問する形にして、売り込みをさらに強化するという。

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